ガソリンスタンドの給油機で作業をするスタッフ。この現場で必要になるのが、消防法に定められた危険物取扱者です。なかでも危険物取扱者 乙種第4類(乙4)は、ガソリン・灯油・軽油・重油など、暮らしに最も近い引火性液体を扱える国家資格です。
本記事では、乙4を、消防試験研究センター・消防法(e-Gov)・総務省消防庁の一次情報をもとに解説します。なお本記事は、データに基づく中立性を保つことを編集方針としています。詳しくは 編集ポリシー と 免責事項 をご覧ください。
1. 結論先出し ── 乙4で押さえる3つのポイント
最初に、乙4の要点を3つに整理しておきます。
- 乙4はガソリン・灯油・軽油・重油などの引火性液体を扱える国家資格:消防法に基づく国家資格で、取扱と立会の権限があります(立会できるのは取得した類別の危険物に限られます)
- 受験資格なし・3科目合計35問のマークシート・合格基準は各科目60%以上:誰でも受験でき、試験時間は2時間。1科目でも60%を割ると不合格になる足切り方式です
- ビルメン4点セットの1つで、引火性液体を扱う現場で広く必要とされる:ガソリンスタンド・タンクローリー・化学工場・ビルメンテナンスなど、活躍の場が広い資格です
なお、「乙4を取れば他の類別の立会もできる」という誤解がありますが、立会できるのは取得した類別の危険物だけです(後ほど詳しく整理します)。
それぞれのポイントを、詳しく見ていきます。
2. 危険物取扱者 乙4とは ── 引火性液体を扱う国家資格
ガソリン、灯油、軽油、重油といった引火性液体は、暮らしに最も身近な危険物です。これらを扱うための国家資格が、危険物取扱者の乙種第4類(乙4)です。
危険物取扱者は消防法に基づく国家資格で、所管は総務省消防庁、試験を実施するのは総務大臣が指定した試験機関の一般財団法人 消防試験研究センターです。免状は甲種・乙種・丙種の3区分に分かれ、乙種はさらに第1類から第6類まで物質ごとに細分されています。乙4はそのうちの1類別です。
2.1 取扱と立会の権限
危険物取扱者の権限は、消防試験研究センターの公式によると次のとおりです。
- 甲種・乙種:取得した類別の危険物について、取り扱い・定期点検・保安の監督ができます
- 立会:甲種または乙種の有資格者が立ち会えば、無資格者も取り扱いや定期点検を行えます
- 丙種:乙種第4類のうち指定された危険物(ガソリン・灯油・軽油・重油など)に限り、取り扱いと定期点検ができます(立会の権限はありません)
つまり乙4を取ると、第4類の危険物を自分で取り扱えるだけでなく、無資格者の作業に立ち会うことができます。立会できるのは「取得した類別」の危険物だけで、乙4だけ持っていても他の類別の取扱・立会はできません。この点はよくある誤解なので、後ほどあらためて整理します。
2.2 甲種・乙種・丙種の位置づけ
3区分の関係を、簡潔に整理しておきます。
| 区分 | 扱える危険物 | 立会 |
|---|---|---|
| 甲種 | すべての類別 | すべての類別で可 |
| 乙種(乙4を含む) | 取得した類別のみ | 取得した類別のみ可 |
| 丙種 | 乙種第4類のうち指定された危険物のみ | 不可 |
(出典:消防試験研究センター「危険物取扱者試験」/取得日 2026-06-05)
乙4は乙種の1類別で、丙種より権限が広く、甲種よりは扱える範囲が限定されます。丙種は乙4の範囲内かつ立会権限がない区分で、乙4より権限は狭くなります。
2.3 乙4で扱える危険物の範囲 ── ガソリンから動植物油まで
乙種第4類が対象とするのは、消防法上の第4類=引火性液体です。公式の表記では「ガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類等」とされています。身近な例で並べると、次のような物質です。
- ガソリン(第1石油類)
- エタノール・メタノールなど(アルコール類)
- 灯油・軽油(第2石油類)
- 重油(第3石油類)
- 潤滑油など(第4石油類)
- サラダ油など(動植物油類)
なお、丙種は乙4の範囲のなかでも「指定された危険物(ガソリン、灯油、軽油、重油など)」に限られ、立会権限もありません。乙4の方が、扱える範囲・権限ともに広い区分です。
もう一歩詳しく
第4類は消防法の別表第1で、引火点や性状によって特殊引火物/第1〜4石油類/アルコール類/動植物油類に細分されています。乙4を取得すると、これらの細分すべてに対する取扱・立会の権限を得る点は押さえておきたいところです。
3. 受験概要 ── 35問・2時間・各科目60%
乙種は受験資格なし(誰でも受験可)。試験は3科目・合計35問のマークシートで、試験時間は2時間、合格には各科目60%以上の正答が必要です。
3.1 試験科目と問題数
乙種(乙4を含む)の試験科目と問題数は次のとおりです。
| 科目 | 問題数 |
|---|---|
| 危険物に関する法令 | 15問 |
| 基礎的な物理学及び基礎的な化学 | 10問 |
| 危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 10問 |
| 合計 | 35問 |
(出典:消防試験研究センター「試験科目及び問題数」/取得日 2026-06-05)
出題形式は5肢択一のマークシート方式です。試験時間は2時間(甲種は2時間30分、丙種は1時間15分)です。
3.2 合格基準 ── 「各科目60%以上」の足切り構造
乙4の合格基準は、3科目それぞれで60%以上の正答が必要です。トータル正答率ではなく、1科目でも60%を割ると不合格になる点が、危険物取扱者試験の特徴です。
3科目の問題数に当てはめると、目安は次のようになります。
- 法令:15問中9問以上
- 物理学及び化学:10問中6問以上
- 危険物の性質・火災予防・消火:10問中6問以上
苦手な科目で1〜2問落とすだけで足切りに当たる可能性があるため、3科目を均等に学ぶ必要があります。
3.3 申込方法
申込方法は、電子申請と書面申請の2通りです。消防試験研究センターは電子申請を推奨しており、専用サイトから受験申請ができます。書面申請の場合は、受験する都道府県の支部へ願書を提出します。
3.4 試験日程・受験料の確認方法
試験は都道府県ごとに実施されており、公式FAQでは「年度途中で試験日程等の変更もあります」と案内されています。乙4は受験機会が比較的多い区分ですが、回数や時期は都道府県・年度によって変動します。受験料・試験日の最新情報は、必ず消防試験研究センターの公式情報でご確認ください。
もう一歩詳しく
すでに他の類別の乙種を取得している場合、追加で別の類別を受験するときは「法令」と「基礎的な物理学及び基礎的な化学」の2科目が免除されます。実質的に「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」1科目で受験できる形です。免除の細部は公式の受験案内でご確認ください。
4. 乙4が活きる現場 ── ガソスタ・タンクローリー・ビルメン・化学
乙4が活きる現場は幅広くあります。ガソリンスタンドの給油作業、タンクローリーでの運搬、化学工場の貯蔵タンク、ビルの地下にあるボイラー燃料の管理など、引火性液体を扱うさまざまな場所で必要とされる資格です。
危険物取扱者は、製造所等で一定数量以上の危険物を貯蔵・取扱う場合に選任が義務づけられる「必置資格」です(消防法)。引火性液体を扱う現場の多くが、乙4の活きる場になります。
4.1 ガソリンスタンド(給油取扱所)
ガソリンスタンドは、給油取扱所として消防法の規制を受ける施設です。ガソリンや軽油は乙4の対象範囲なので、乙4または甲種の有資格者が立会にあたることが法令上の前提になります。セルフ式や深夜帯のスタンドでも、有資格者の常駐・立会が求められます。
4.2 タンクローリー(「運搬」と「移送」は別の概念)
タンクローリーで危険物を運ぶ作業は、消防法上は「移送」と呼ばれ、乙4が活きる代表的な現場のひとつです。ここで押さえておきたいのが、「運搬」と「移送」は別の概念だという点です。
- 運搬:危険物を容器に入れて車両等で運ぶこと
- 移送:移動タンク貯蔵所(タンクローリー)で危険物を運ぶこと
タンクローリーによる移送は移動タンク貯蔵所での作業にあたり、乙種第4類または甲種の有資格者が乗務する必要があります。容器入りのドラム缶などを運ぶ「運搬」とは扱いが異なる点に注意が必要です。
4.3 化学工場・石油関連施設
化学工場、石油精製・貯蔵施設、塗料工場など、引火性液体を扱う製造所・貯蔵所も乙4が活きる現場です。一定数量を超える危険物を扱う事業所では、危険物保安監督者の選任が必要になり、乙4などの有資格者がその任に当たることになります。
4.4 ビルメンテナンス(ボイラー燃料の重油・軽油)
ビルメンテナンスの現場でも、乙4は要となる資格のひとつです。ビルの地下や機械室のボイラーは、燃料として重油や軽油を使うものがあり、これらは乙4の対象範囲です。一定数量以上を貯蔵・取扱う場合、有資格者の選任が必要になります。
ビルメンテナンス業界では、乙4は「4点セット」と広く呼ばれる4資格の1つに位置づけられています。詳しくは次の章で整理します。
5. ビルメン4点セットとしての位置づけ
ビルメンテナンス業界には、「4点セット」と広く呼ばれる4つの資格があります。乙4はそのうちの1つです。
5.1 4点セットの構成
ビルメンテナンス業界で言われる4点セットは、次の4資格です(業界慣用の呼称で、特定の業界団体が公式に定義しているものではありません)。
| 4点セット | 資格名 | 所管 |
|---|---|---|
| ① | 第二種電気工事士 | 経済産業省 |
| ② | 二級ボイラー技士 | 厚生労働省 |
| ③ | 第三種冷凍機械責任者 | 経済産業省 |
| ④ | 危険物取扱者 乙種第4類(乙4) | 総務省消防庁 |
ビルメンテナンスの現場では、電気設備・ボイラー・冷凍機・燃料の4つの領域に資格が必要になる場面があり、業界では4資格を順に取得していくキャリアパスが広く紹介されています。
5.2 4点セットのなかでの乙4の位置づけ
4点セットのなかで、乙4は受験資格なしという点で入口として選ばれやすい資格です。学習範囲も比較的限定的で、4点セットの最初の1本として紹介されることが多い位置づけです。
ただし、「簡単」「誰でも合格できる」と断定はできません。合格基準は3科目それぞれで60%以上の足切りがあり、合否は学習量・経験・受験対策によって変わります。「比較的取り組みやすいとされる」位置づけとして押さえておくのが適切です。
5.3 第二種電気工事士は別記事で深掘り
4点セットの1つである第二種電気工事士については、試験区分・できる作業の範囲・将来性まで一次情報で整理した別記事があります。あわせてご覧ください。
→ 電気工事士とは|第二種・第一種の違い・できること・将来性
6. 学習・取得の進め方 ── 独学/通信/給付金
乙4の学習スタイルは、大きく独学・通信講座・通学の3つに分かれます。それぞれの特徴を見ていきます。
6.1 学習時間の目安
通信講座各社・受験対策本で言われている目安は40〜60時間前後です。ただし、化学の基礎知識の有無によって必要な学習時間は変わりますし、1日に確保できる学習時間によって期間も変わってきます。「○時間で必ず受かる」と断定できるものではない点は押さえておきたいところです。
6.2 独学のメリット・課題
乙4は受験者数の規模が大きく、市販テキスト・過去問集が豊富とされる資格です。複数のテキストを比較しやすく、独学で取り組みやすい環境がそろっています。一方、化学・物理の基礎が手薄な方は、物理学・化学科目で60%を割るリスクがあります。3科目すべてで60%以上の正答率が必要なことを踏まえると、苦手科目の補強に工夫が必要になる場合があります。
6.3 通信講座という選択肢
通信講座は、教材・添削・質問対応がセットになり、在宅で完結できる学習スタイルです。学習計画が立てやすい、過去問の解説が手厚いといった点が選ばれる理由として挙げられます。費用は独学より高くなりますが、後述の教育訓練給付金の対象になる講座も時期によってはあります。
6.4 教育訓練給付金の対象になり得るか
乙4対策の通信講座のなかには、厚生労働省の教育訓練給付制度の対象になっているものがあります。対象になっていれば、受講修了後に受講料の一定割合(一般教育訓練給付の場合は20%・上限あり)が支給されます。
ただし、対象講座の指定状況は時期によって変動します。「実質無料」と断定できる仕組みではなく、対象者の要件(雇用保険の被保険者期間など)もあるため、最新の指定状況・自分が対象者かどうかは厚生労働省の検索システムでご確認ください。給付制度の全体像は、別記事で整理しています。
7. 乙4取得後のステップアップ ── 他類別・甲種・科目免除
乙4を取った人の次の一歩は、大きく2つあります。他の類別の乙種を追加で取るか、甲種を目指すかです。
7.1 他の類別の取得(乙種保有者への科目免除あり)
乙4を持っている方が他の類別の乙種(第1・2・3・5・6類)を追加で受験するときは、「法令」と「基礎的な物理学及び基礎的な化学」の2科目が免除されます。実質的に「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」1科目で受験できる形になり、追加取得の負荷が大きく下がります。化学工場・倉庫業など、扱う危険物の幅を広げたい方は、他類別の追加取得を視野に入れるとよいでしょう。
7.2 甲種へのステップアップ
甲種を目指す場合、受験資格を満たす必要があります。乙4取得者が満たしやすい代表的なルートは次の2つです。
- 乙種+実務経験2年以上:乙種の免状を持ち、危険物製造所等での実務経験が2年以上ある方
- 指定の4種類以上の乙種免状:「第1類または第6類/第2類または第4類/第3類/第5類」の4種類以上の乙種を取得している方
乙4は2番目のルートの「第2類または第4類」枠に該当します。残り3枠(第1or6・第3・第5)を順に取れば、実務経験なしでも甲種の受験資格を満たせる構造です。
このほか、次の方も甲種を受験できます。
- 大学等で化学に関する学科を修めて卒業した方
- 化学に関する授業科目を15単位以上修得した方
- 化学に関する事項を専攻して修士・博士の学位を取得した方
詳しい要件は消防試験研究センターの受験案内でご確認ください。
8. よくある質問(FAQ)
Q:乙4はどれくらい難しいですか?
A:受験資格なし(誰でも受験可)で、学習範囲も比較的限定的とされる国家資格です。ただし、合格基準は3科目それぞれで60%以上が必要になっており、苦手科目があると合格しにくくなっています。合格率の最新値は消防試験研究センターの公式情報でご確認ください。
Q:乙4の受験資格はありますか?
A:ありません。消防試験研究センターの公式に「誰でも受験できます」と明記されています。年齢・学歴・実務経験の要件はなく、学生でも社会人でも、未経験でも受験できます。
Q:学習時間はどれくらい必要ですか?
A:通信講座各社・受験対策本では、40〜60時間前後を目安とすることが多いようです。ただし化学の基礎知識の有無や1日に確保できる学習時間によって、必要な時間・学習期間は変わります。
Q:ガソリンスタンドで働くには乙4が必要ですか?
A:給油作業そのものは無資格でも行えますが、乙4以上の有資格者の立会が必要です。深夜帯のセルフ給油所などでも、乙4を持つスタッフの常駐・立会が求められます。
Q:乙4を取れば他の類別の立会もできますか?
A:できません。乙種で立会できるのは「取得した類別」の危険物に限られます。第1類(酸化性固体)や第3類(自然発火性物質・禁水性物質)の立会には、別途その類別の免状が必要です。全類別の立会を希望する場合は、甲種を目指す形になります。
Q:受験料・試験日はどこで確認できますか?
A:受験料・試験日は年度・都道府県によって変動するため、本記事では具体的な金額・日程は記載していません。最新の情報は消防試験研究センターの公式情報・全国試験日程ページでご確認ください。
9. まとめ ── 乙4は「身近な引火性液体を扱える入口の国家資格」
本記事では、乙4を、消防試験研究センター・消防法・総務省消防庁の一次情報をもとに解説してきました。
- 乙4はガソリン・灯油・軽油・重油などの引火性液体を扱える国家資格:消防法に基づき、取扱と立会の権限を与える。立会できるのは取得した類別の危険物のみ
- 受験資格なし・3科目35問・各科目60%以上の足切り構造:誰でも受験でき、試験時間は2時間。受験料・試験日は都道府県・年度で変動するため公式で確認
- ビルメン4点セットの1つで、引火性液体を扱う現場で広く必要とされる:ガソリンスタンドや化学工場、ビルメンテナンスなど活躍の場が広い乙種の主要な類別
- 次の一歩は「他の類別の追加取得」または「甲種ルート」:他の乙種は2科目免除あり。甲種は乙種+実務2年または指定4種類以上のルートで受験資格を満たせる
乙4は受験資格なしで受けられる、暮らしに身近な危険物を扱える国家資格です。危険物を扱う仕事の入口として、またビルメン4点セットの1つとしても選ばれています。どの資格から取るかは目的によって変わります。本記事が、その判断の材料になれば幸いです。
次に読むべき記事
出典
- 消防試験研究センター「危険物取扱者試験」(3区分・乙4の対象範囲・取扱と立会の権限・受験資格・試験科目と問題数・試験時間・試験実施状況/取得日 2026-06-05)
- 消防法(e-Gov 法令検索)(危険物取扱者免状の3区分・製造所等での選任義務・指定数量の枠組み/取得日 2026-06-05)
- 総務省消防庁(公式サイト)(危険物保安行政の所管/取得日 2026-06-05)
文責:現場エンジン編集部
最終更新日:2026-06-05
