「電気工事士を取りたいけれど、結局いくらかかるのか」── 受験料だけでなく、工具や練習材料、講座費、さらに免状の交付手数料まで含めると、総額が見えにくくなりがちなのが電気工事士です。「給付金で安くなる」と聞いても、何にいくら支給されるのかは分かりにくいもの。
本記事では、電気工事士(第二種・第一種)の取得にかかる費用を項目ごとに分解し、教育訓練給付金を使った場合の実質負担額まで、各公式の一次情報をもとに中立に整理します。先に大事な点を一つ。給付金は「実質無料」になる制度ではありません。何が給付金の対象で、何が対象外かを正しく押さえることが、費用を見積もる第一歩です。
なお本記事は、データに基づく中立性を保つことを編集方針としています。詳しくは 編集ポリシー と 免責事項 をご覧ください。
1. 結論先出し ── 取得費用の3つのポイント
最初に、費用を考えるうえで押さえたい3点を整理します。
- 費用は「手続き系+工具・部材+学習系」の積み上げ:受験料・免状交付(手続き系)、工具・練習材料、教材または講座費(学習系)の合計で決まります。学習方法と工具の有無で総額が数万円変わります
- 給付金は「講座費」だけ対象:受験料・工具・部材・免状交付手数料は給付の対象外です。教育訓練給付の対象は、原則として指定された講座の受講料です
- 先払い後戻りの仕組み(「実質無料」ではない):給付は受講料をいったん全額払い、修了後に申請して一部が戻る仕組みで、個人の要件もあります
費用の総額の目安は、後ほど「第二種・第一種の合計費用の目安」の節でまとめます。まずは項目ごとに見ていきましょう。
2. 受験料・免状交付手数料(手続きにかかる費用)
合格して免状を手にするまでに、学習費とは別に「手続き系」の費用がかかります。
2.1 受験手数料
電気工事士試験の受験手数料は次のとおりです(電気技術者試験センター/取得日 2026-05-24)。原則としてインターネット申込です。
| 区分 | インターネット申込 | 書面(郵送)申込 |
|---|---|---|
| 第二種 | 11,100円 | 12,500円 |
| 第一種 | 13,000円 | 14,400円 |
※いずれも非課税です。書面申込は割高になります。受験手数料は2025年11月施行の電気工事士法施行令改正で全区分が改定されました(例:第二種インターネット申込 9,300円→11,100円)。再受験する場合は、その都度あらためて受験手数料がかかります。
2.2 免状交付手数料
試験に合格しても、免状の交付申請に別途手数料がかかります。電気工事士免状は各都道府県知事が交付するため、申請先は住所地の都道府県です。
- 第二種:5,300円(政令の標準額。大阪府公式で確認/取得日 2026-05-24)
- 第一種:6,000円
この金額は「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」の標準額で全国でおおむね共通ですが、条例で定めるため厳密には都道府県により異なる場合があります。また支払方法は自治体で異なり、従来の収入証紙から電子納付(クレジット・コード決済等)へ移行している都道府県もあります。申請の際は、住所地の都道府県の公式ページで最新の金額と納付方法をご確認ください。
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受験料・免状交付手数料はいずれも給付金の対象外で、額もほぼ固定です。注意したいのは再受験で、不合格になると受験手数料が再度かかります。学習費を抑えても落ちて受け直せば総額は増える、という意味では、合格までの学習設計も「費用」に関わってきます。
3. 工具・練習用部材の費用(技能試験の実費)
電気工事士試験は学科と技能の2段階で、技能試験は実技です。複線図どおりに配線する練習が欠かせず、ここに工具・材料の費用がかかります。
3.1 指定工具セット
技能試験では指定された作業ができる工具が必要です。受験用にまとめられた工具セットの相場はおおむね15,000〜25,000円程度です(複数の販売情報を総合/取得日 2026-05-24)。工具は第二種・第一種で共通して使えるため、第一種を受ける際に買い直す必要は基本的にありません。
3.2 練習用部材(電線・器具)
技能試験は候補問題が事前公表され、それを練習するための電線・器具(部材)セットが販売されています。相場は1回分でおおむね2万〜4万円とブランドや内容で幅があり、2回分のセットはさらに高くなります。費用を抑えたい場合、練習材料のレンタルサービスも存在し、購入より初期費用を抑えられるケースがあります。中古・フリマでの調達もありますが、指定された規格の工具か(圧着工具はJIS適合品。握り部分が黄色のものが目安です)、技能試験会場へ持ち込めるかを必ず確認したうえで検討してください。
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ここは 通信講座を比較した記事 とも関わります。「学科中心の安い講座+工具・部材は別で用意」と「工具・部材込みの講座」では総額の出方が変わります。すでに工具を持っている人は教材中心、ゼロから揃える人はセット込みや材料付き講座、というように、手持ちの工具の有無で最適な選び方が変わります。
4. 教材・講座の費用(独学/通信講座)
学習にかかる費用は、独学か講座利用かで大きく変わります。
4.1 独学(テキスト・過去問)
市販のテキストと過去問題集で独学する場合、学科・技能あわせて2,000〜4,000円程度から始められます(複数の費用情報を総合/取得日 2026-05-24)。学習費そのものは最小ですが、技能試験の練習環境(工具・部材)は自分で用意する必要があります。
4.2 通信講座
通信講座を使う場合の受講料は、第二種でおおむね2万円台〜6万円台、第一種で3万〜10万円程度が目安です。講座ごとの料金・教材・工具部材セットの有無・給付対象かどうかは差が大きいため、個別の比較は専用記事にまとめています。
→ 各講座の詳しい比較は 電気工事士の通信講座を比較【第二種・第一種】 をご覧ください。
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独学は学習費が最小ですが、技能の練習環境は自前。通信講座は費用がかかる一方で、指定講座であれば教育訓練給付金の対象になり得ます。「安さ」だけでなく、給付の対象か・練習環境が含まれるかも含めて総額で考えるのがコツです(給付金の扱いは次の節で整理します)。
5. 給付金適用後の「講座費の実質負担」を試算する
ここが費用記事の核心です。教育訓練給付金を使うと、講座費の負担はどう変わるのでしょうか。
5.1 給付の対象範囲(対象は講座費だけ)
一般教育訓練給付金は、一定の要件を満たす場合、対象講座を修了すると受講料の20%(上限10万円)が修了後に支給されます。電気工事士の通信講座は一般教育訓練(20%)の指定が中心です。ただし重要なのは対象範囲です。
制度の区分・要件・申請の流れは 教育訓練給付金 完全ガイド で詳しく整理しています。
5.2 講座費の実質負担の試算
対象講座を使った場合の、講座費に限った実質負担を試算します(一般教育訓練給付・20%・上限10万円を適用)。以下は講座費だけの試算で、受験手数料・工具・部材・免状交付手数料は含みません。
| ケース | 講座費(例) | 給付(20%・上限10万) | 講座費の実質負担 |
|---|---|---|---|
| 独学(講座なし) | 0円 | 対象なし | 0円(講座費のみ) |
| 通信講座 5万円 | 50,000円 | −10,000円 | 約40,000円 |
| 通信講座(高め)8万円 | 80,000円 | −16,000円 | 約64,000円 |
※独学の場合も、受験料・工具・部材は別途必要です。給付は修了後に申請して後から戻ります。対象は受講料で、受験料・工具・部材・免状交付は対象外。対象講座か・個人の要件を満たすかの確認が必要です(→ 給付金ガイド)。
データを読み解く
給付で戻るのは講座費の一部(20%)だけです。総取得費用には受験料・工具・部材・免状も含まれ、これらは戻りません。第一種は講座費のレンジが高い分、戻る額も大きくなり得ますが、工具を第二種から流用できる場合は実質負担の構成が変わります。「給付でいくら戻るか」だけでなく、「戻らない費用がいくらあるか」も合わせて見るのが現実的です。
6. 第二種・第一種の合計費用の目安
ここまでの項目を合算した、取得までの費用の目安です(2026-05-24 時点・税込/非課税混在)。
| 費用項目 | 第二種の目安 | 第一種の目安 |
|---|---|---|
| 受験手数料(ネット申込) | 11,100円 | 13,000円 |
| 免状交付手数料 | 約5,300円 | 約6,000円 |
| 指定工具セット | 約15,000〜25,000円 | 第二種と共通・流用可 |
| 練習用部材 | 約2万〜4万円 | 第一種用が別途 |
| テキスト・過去問 | 2,000〜4,000円 | 同程度〜 |
| 通信講座(使う場合) | 2万〜6万円台 | 3万〜10万円 |
データを読み解く
独学で工具・部材を一通り揃える場合、第二種はおおむね5万〜9万円程度が目安です(講座を使う場合は講座費が加わり、対象なら一部が給付で戻ります)。第一種は受験料・免状が第二種より高めですが、第二種を取得済みなら工具を流用でき、追加は第一種用の部材が中心になります。なお、この合計は「取得まで」の目安です。取得後・関連資格にかかる費用は次章で扱います。
7. 合格後・関連資格にかかる費用
電気工事士は、取得後や関連資格で費用がかかる場合があります。いずれも該当する人だけに必要な費用です。
7.1 第一種電気工事士の定期講習
第一種電気工事士は、免状の取得後5年以内ごとに定期講習の受講が義務づけられています(電気工事士法)。指定講習機関は複数あり、代表的な電気工事技術講習センターの受講料は9,000円(非課税)です(取得日 2026-05-24/機関により異なる場合があります)。第一種の免状を持ち続ける限り、5年ごとにこの費用が発生します(第二種にはこの義務はありません)。
7.2 認定電気工事従事者(自家用の低圧工事に従事したい場合)
第二種電気工事士の資格では、原則として一般用電気工作物の工事に従事できますが、ビルや工場などの自家用電気工作物の低圧部分の工事に従事するには「認定電気工事従事者」の認定が必要です。これは第二種取得者などが対象で、取得ルートは2つあります。
- 認定講習を修了する:受講料は12,500円(税込)(電気工事技術講習センター/取得日 2026-05-24)
- 第二種免状取得後3年以上の実務経験で申請する
いずれの場合も、住所地を管轄する産業保安監督部へ申請し、認定証の交付手数料4,700円が必要です(産業保安監督部/取得日 2026-05-24。従来は収入印紙での納付ですが、申請方法により電子納付等の場合があります)。
もう一歩詳しく
これらは「全員に必要な費用」ではありません。第一種定期講習は第一種免状を保有する人の義務、認定電気工事従事者は自家用の低圧工事も手がけたい人向けです。自分の進む方向(どんな現場で働くか)が決まってから検討すれば十分で、取得段階で慌てて見込む必要はありません。
8. よくある質問(FAQ)
Q:電気工事士の取得費用はなぜ人によって差が出るのですか?
A:主に「学習方法」と「工具の有無」で変わります。独学なら学習費は数千円ですが、通信講座を使えば第二種で2万円台〜、第一種で3万円〜と幅があります。工具・部材を一から揃えるか、手持ちがあるか、レンタルを使うかでも数万円の差が出ます。合計の目安は「第二種・第一種の合計費用の目安」の節をご覧ください。
Q:受験料はいくらですか?再受験でもかかりますか?
A:インターネット申込で第二種11,100円・第一種13,000円です(書面申込は割高)。再受験する場合は、その都度あらためて受験手数料がかかります。
Q:工具や練習材料は必ず買う必要がありますか?レンタルはありますか?
A:技能試験は実技のため、練習用の工具・部材は基本的に必要です。費用を抑えたい場合はレンタルサービスや中古の活用もありますが、指定規格の工具か・会場へ持ち込めるかを確認してください。工具は第二種・第一種で共通して使えます。
Q:免状の交付にもお金がかかりますか?
A:かかります。免状は各都道府県知事が交付し、手数料はおおむね第二種5,300円・第一種6,000円です。支払方法(収入証紙か電子納付か)は都道府県で異なるため、申請先の公式ページでご確認ください。
Q:給付金をもらえば実質いくらですか?「実質無料」になりますか?
A:なりません。一般教育訓練給付は講座費の20%(上限10万円)が修了後に戻る制度で、受験料・工具・部材・免状交付は対象外です。たとえば5万円の対象講座なら約1万円が戻り、講座費の実質負担は約4万円です(要件あり・先払い後戻り)。詳細は 給付金ガイド を参照してください。
Q:独学と通信講座ではどちらが安いですか?
A:学習費だけなら独学が最小です。ただし通信講座は技能の練習環境が含まれることや、指定講座なら給付対象になり得る点が違います。どちらが向くかは一概に言えません。講座の比較は 通信講座の比較記事 をご覧ください。
Q:第一種は第二種よりどれくらい高いですか?
A:受験料・免状交付手数料は第一種の方がやや高めです。一方で工具は第二種から流用でき、追加は第一種用の部材が中心です。なお第一種は取得後に5年ごとの定期講習(9,000円)もかかります。
Q:合格後にもお金はかかりますか?
A:人によります。第一種免状を持つ場合は5年ごとの定期講習(9,000円)が義務です。第二種取得者が自家用の低圧工事にも従事したい場合は、認定電気工事従事者の認定講習(12,500円)や認定証交付手数料(4,700円)がかかります。いずれも該当する人のみで、要件は公式でご確認ください。
9. まとめ ── 費用は「内訳」と「給付の対象範囲」で考える
本記事では、電気工事士の取得費用を項目ごとに整理してきました。
- 費用は「手続き系+工具・部材+学習系」の積み上げ:学習方法と工具の有無で総額が変わる
- 給付金は講座費だけ対象:受験料・工具・部材・免状は対象外。「実質無料」ではない
- 合格後・関連資格の費用は該当者のみ:第一種の定期講習、認定電気工事従事者など
費用は「給付でいくら戻るか」だけでなく、「戻らない費用がいくらあるか」「自分はどの学習方法を選ぶか」で実態が決まります。総額の見通しを立てたうえで、講座を使うなら対象講座かを確認し、申請の要件は公式でチェックする ── この順番で考えると、費用の見積もりが立てやすくなります。
次に読むべき記事
出典
- 電気技術者試験センター「第二種電気工事士試験」「第一種電気工事士試験」(取得日 2026-05-24)
- 大阪府「電気工事士免状の交付申請(手数料)」(取得日 2026-05-24/免状交付手数料は各都道府県知事が交付・政令標準額)
- 電気工事技術講習センター「認定電気工事従事者認定講習」「第一種電気工事士定期講習」(取得日 2026-05-24)
- 厚生労働省「教育訓練給付制度 検索システム」(取得日 2026-05-24)
文責:現場エンジン編集部
最終更新日:2026-05-24
