ビルメンの資格とは|4点セット・3種の神器と未経験からのキャリアアップ【設備管理】

オフィスビルの照明、商業施設の空調、マンションの給排水。建物の中で当たり前に動いている設備は、誰かが点検し、トラブルに備えているからこそ動いています。その設備を守るのが、ビルメンテナンス(設備管理)の仕事です。

この仕事に関係する資格には、未経験者がまず目指す4つの資格(いわゆる「ビルメン4点セット」)と、その先のキャリアアップのための3つの資格(いわゆる「3種の神器」)があります。本記事では、これらの資格について、それぞれの内容と取り方を、各実施機関・所管省庁の一次情報をもとに解説します。

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1. ビルメンの資格の全体像

ビルメンの資格は、2つのグループに分けて考えると分かりやすくなります。

ひとつは、未経験からの入口となる「ビルメン4点セット」です。第二種電気工事士・二級ボイラー技士・第三種冷凍機械責任者・危険物乙4の4つで、いずれも受験資格は問われず、誰でも受験できます。

もうひとつは、その先のキャリアアップを担う「3種の神器」です。電験三種・ビル管理士・エネルギー管理士の3つを指します。難易度が高く、現場で働きながら段階的に目指す方が多い資格群です。資格ごとの要件の違いは、次の章で詳しく説明します。

どちらも業界で広く使われている呼び名で、公式に定義された区分ではありません。

2. ビルメン(設備管理)の仕事とは

ビルの設備管理は、建物の中の電気・空調・給排水・防災設備などが問題なく動いているかを点検し、トラブルが起きたときに対応する仕事です。日常点検や定期点検、設備の運転監視、入居者・テナントからの不具合対応などが主な内容になります。

扱う設備は幅広く、主に次のようなものがあります。

  • 電気設備(受変電設備・照明・コンセントなど)
  • 空調設備(冷暖房・換気)
  • 給排水・衛生設備(給水・給湯・排水・トイレなど)
  • ボイラー・熱源設備
  • 消防・防災設備

働き方は施設によってさまざまで、ビルに常駐する形もあれば、複数の物件を回る巡回の形もあります。宿直勤務がある現場もあります。収入や労働環境は、施設の規模・地域・雇用形態・本人の経験によって大きく異なるため、一概には言えません。

設備の種類によっては、法律で取り扱いや保安監督の担い手が定められています。資格を持つ人の配置・選任が法律で求められる場面があることが、設備管理で資格が重視される背景です。

なお、ビルメン関連の資格は、所管する省庁が分かれています。電気は経済産業省、ボイラーは厚生労働省、危険物は総務省消防庁、というように、扱う設備ごとに根拠となる法律と所管が違います。

次の章からは、資格ごとに詳しく見ていきます。

3. ビルメン4点セット ── 未経験からの入口

未経験からビルメンを目指すとき、最初の入口としてよく挙げられるのが「ビルメン4点セット」です。受験資格が原則なく挑戦しやすい4つの資格を指す、業界の慣用的な呼称です。

資格名 所管 根拠法 受験資格
第二種電気工事士 経済産業省 電気工事士法 なし
二級ボイラー技士 厚生労働省 労働安全衛生法 なし
第三種冷凍機械責任者 経済産業省 高圧ガス保安法 なし
危険物取扱者 乙種第4類(乙4) 総務省消防庁 消防法 なし

3.1 第二種電気工事士

住宅や小規模店舗の電気工事を行うための資格です。コンセントの増設や照明の交換など、一般用電気工作物の工事は、電気工事士でなければ作業できません。4点セットの中では筆記試験に加えて技能(実技)試験がある分、対策の負荷はやや高めです。それでも電気はビルメンで扱う主要な設備のひとつで、取得を目指す人が多い資格です。

詳しくは別記事で解説しています。

→ 電気工事士とは|第二種・第一種の違い・できること・将来性

3.2 危険物取扱者 乙種第4類(乙4)

ガソリン・灯油・軽油・重油といった引火性液体を扱うための資格です。ボイラー設備や非常用発電機に使う燃料を扱うにはこの資格が必要になり、ビルの設備管理では役に立つ場面が多くあります。4点セットの中でも挑戦しやすい資格として知られています。

詳しくは別記事で解説しています。

→ 危険物取扱者 乙種第4類(乙4)とは

3.3 二級ボイラー技士

ビルの空調や給湯に使われるボイラーを取り扱うための資格です。所管は厚生労働省、労働安全衛生法に基づく国家資格で、特級・一級・二級のうち二級が入門にあたります。受験に実務経験などの要件はなく、誰でも受験できます。

二級ボイラー技士には、4点セットの中でも独特の仕組みがあります。学科試験に合格しただけでは免許は交付されません。免許を受けるには、試験合格に加えて、ボイラー実技講習(3日間・20時間)を修了するか、一定の実務経験を満たす必要があります。実技講習は試験の前に受けても、合格した後に受けてもかまいません。「試験に受かれば終わり」ではない点が、ほかの3資格と違うところです。

詳しくは別記事で解説しています。

→ 二級ボイラー技士とは|受験資格・実技講習・ビルメン4点セットの入門資格

3.4 第三種冷凍機械責任者

ビルの空調や冷凍・冷蔵設備で使われる高圧ガス設備の保安を担う資格です。所管は経済産業省、高圧ガス保安法に基づく国家資格で、第一種・第二種・第三種のうち第三種が入門にあたります。受験資格はなく、誰でも受験できます。

この資格には科目免除の仕組みがあります。高圧ガス保安協会が実施する講習を受けて検定試験に合格すると、国家試験の科目の一部(保安管理技術)が免除され、国家試験では法令の1科目だけを受ければよくなります。試験勉強の負担を分散できる選択肢として知られています。

詳しくは別記事で解説しています。

→ 第三種冷凍機械責任者とは|科目免除・冷凍保安責任者・ビルメン4点セットの入門資格

4点セットは、資格ごとに試験や免許取得の仕組みが違います。二級ボイラー技士は試験合格後に実技講習が必要で、第三種冷凍機械責任者には科目免除の制度があります。受験を申し込む前に、それぞれの取り方を知っておくと計画を立てやすくなります。

4. ビルメン3種の神器 ── キャリアアップ資格

設備管理でキャリアアップを目指すときに挙げられるのが「3種の神器」です。電験三種・ビル管理士・エネルギー管理士の3つを指す、業界で広く使われる呼び名です。いずれも難易度が高く、取得すると、担当できる現場や業務の幅が広がります。

資格名 所管 根拠法 受験・取得の要件
第三種電気主任技術者(電験三種) 経済産業省 電気事業法 受験資格なし
建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士) 厚生労働省 建築物衛生法 受験に実務2年
エネルギー管理士 経済産業省 省エネ法 免状交付に実務1年

4.1 第三種電気主任技術者(電験三種)

ビルや工場の事業用電気工作物の保安監督を担う国家資格です。事業用電気工作物の設置者には電気主任技術者の選任が法律で義務づけられている必置資格です。3種の神器の中では受験資格がなく、誰でも受験できるため、4点セットと並行して、あるいは先に挑戦する人もいます。

詳しくは別記事で解説しています。

→ 第三種電気主任技術者(電験三種)とは

4.2 建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)

大規模な建物の環境衛生(空気・水・清掃・ねずみや害虫の防除など)を総合的に管理する国家資格で、「ビル管」とも呼ばれます。所管は厚生労働省、建築物衛生法に基づく資格です。延べ面積3,000平方メートル以上(学校は8,000平方メートル以上)の特定建築物には、ビル管理士の選任が義務づけられています。

ビル管理士は、受験そのものに実務経験が必要です。特定建築物などで環境衛生上の維持管理に2年以上たずさわった経験が求められるため、未経験からすぐに受験することはできません。

詳しくは別記事で解説しています。

→ 建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)とは

4.3 エネルギー管理士

工場やビルのエネルギー使用の合理化(省エネ)を担う国家資格です。所管は経済産業省、エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)に基づきます。一定規模以上のエネルギーを使う工場・事業場では、エネルギー管理士の選任が義務づけられる場合があります。

エネルギー管理士は、試験そのものは受験資格なしで受けられますが、免状の交付には実務経験が必要です。エネルギーの使用の合理化に関する実務を1年以上経験することが免状交付の要件で、この実務経験は試験合格の前でも後でもかまいません。試験に合格しても、実務経験がない段階では免状が交付されない点に注意が必要です。なお、試験を受けずに認定研修で取得するルートもありますが、こちらは受講時点で3年以上の実務経験が求められるうえ、講義のあとの修了試験に合格する必要があります。

詳しくは別記事で解説しています。

→ エネルギー管理士とは|免状交付の実務要件・エネルギー管理研修・選任義務

3種の神器は、4点セットで現場に入ってから、働きながら段階的に目指す資格群です。「まず受けてみる」で挑戦できる4点セットとは、取り方の重みが異なります。

5. 各資格の難易度と、未経験からの取り方

7つの資格の難易度の目安と、受験・取得の要件を一覧にまとめます。

資格 受験資格 固有の要件 難易度の目安
危険物乙4 なし — 挑戦しやすい
第二種電気工事士 なし 技能(実技)試験あり 標準的(実技対策が必要)
二級ボイラー技士 なし 免許交付に実技講習または実務 挑戦しやすい
第三種冷凍機械責任者 なし 科目免除制度あり 標準的
電験三種 なし 科目別合格制 難関
ビル管理士 実務2年 — 難関
エネルギー管理士 試験はなし 免状交付に実務1年 難関

難易度はあくまで一般的に言われている相対的な目安です。各資格の合格率や学習時間の数値は、年度によって変わり、個人の経験や前提知識によっても大きく異なります。具体的な数値は、各資格の個別記事や各実施機関の公式情報でご確認ください。

そのうえで、未経験から取る順番について、一般的に言われている考え方を紹介します。

まず、受験資格のない4点セットから始める方が多いようです。中でも乙4や二級ボイラー技士は挑戦しやすく、技能試験の対策が必要な第二種電気工事士は、少し腰を据えて取り組む位置づけになります。

3種の神器は、実務経験が前提になるビル管理士・エネルギー管理士を、現場で働きながら段階的に目指す形が一般的です。電験三種は受験資格がないため、4点セットと並行して、あるいは先に挑戦する人もいます。

ただし、これらはあくまで一つの考え方です。どの資格をどの順で取るかは、就きたい職場や担当したい設備、現在の知識によって変わります。

6. 学習方法・教育訓練給付金

ビルメン関連の資格は、独学と通信講座のどちらでも学習できますが、資格によって市販テキストや通信講座の充実度に差があります。受験者数が多い乙4・第二種電気工事士・電験三種などは教材が豊富で、独学の情報も多く出回っています。

通信講座は、教材・添削・質問対応がセットになり、在宅で学習を進められるスタイルです。費用は独学より高くなりますが、学習計画を立てるのが苦手な方や、基礎から体系的に学びたい方に向いた選択肢として紹介されます。

費用面では、通信講座のなかに、厚生労働省の教育訓練給付制度の対象になっているものがあります。対象講座を受講して修了すれば、受講料の一定割合が支給されます。ただし「実質無料」と断定できる仕組みではなく、対象講座は時期によって変動し、対象者にも要件(雇用保険の被保険者期間など)があります。最新の対象講座や自分が対象かどうかは、別記事と厚生労働省の検索システムでご確認ください。

→ 教育訓練給付金 完全ガイド

7. よくある質問(FAQ)

Q:ビルメン4点セットは一度にまとめて取る必要がありますか?

A:いいえ。一度に取る必要はありません。受験資格がなく順番も自由なので、取りやすいものから一つずつ取る方もいれば、複数を並行して目指す方もいます。自分のペースで進めて問題ありません。

Q:未経験でも「3種の神器」を取れますか?

A:資格によって異なります。電験三種は受験資格がないため未経験でも受験できます。一方、ビル管理士は受験に実務2年、エネルギー管理士は免状交付に実務1年が必要で、現場での経験を積むことが前提になります。

Q:二級ボイラー技士は試験に合格すれば免許がもらえますか?

A:学科試験の合格だけでは免許は交付されません。免許を受けるには、試験合格に加えて、ボイラー実技講習を修了するか、一定の実務経験を満たす必要があります。実技講習は試験の前後どちらで受けてもかまいません。

Q:第三種冷凍機械責任者の「科目免除」とは何ですか?

A:高圧ガス保安協会が実施する講習を受けて検定試験に合格すると、国家試験の科目の一部(保安管理技術)が免除される仕組みです。免除を使うと、国家試験では法令の1科目だけを受ければよくなります。

Q:どの資格から取るのがおすすめですか?

A:目的によって変わるため、一概には言えません。一般的には、受験資格のない4点セットから始める方が多く、中でも挑戦しやすい乙4や二級ボイラー技士から入る方もいます。そのうえで、現場で経験を積みながら3種の神器を目指す流れが多いようです。

8. まとめ

ビルメンの資格は、未経験からの入口となる「4点セット」(第二種電気工事士・二級ボイラー技士・第三種冷凍機械責任者・乙4)と、その先のキャリアアップを担う「3種の神器」(電験三種・ビル管理士・エネルギー管理士)に分けられます。

4点セットはいずれも受験資格なし(誰でも受験できる)で、未経験からの第一歩として選ばれることが多い資格群です。一方、3種の神器のうちビル管理士は受験に、エネルギー管理士は免状の交付に実務経験が必要で、現場で働きながら目指す資格です。

どの資格からどの順で取るかに、決まった正解はありません。目的や職場、興味によって変わります。本記事が、その判断の材料になればさいわいです。

各資格の詳しい内容は、個別の記事でも解説しています。

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出典


文責:現場エンジン編集部