スーパーの冷蔵・冷凍ショーケース、ビルの空調、冷凍倉庫。私たちの暮らしを支える冷凍設備は、高圧の冷媒ガスを循環させて熱を運んでいます。この設備の保安を担う国家資格が、第三種冷凍機械責任者です。
本記事では、第三種冷凍機械責任者(略して「三冷」とも呼ばれます)を、高圧ガス保安協会・経済産業省の一次情報をもとに解説します。受験資格や試験内容に加えて、この資格の特徴である「科目免除」の仕組みにもふれます。
なお本記事は、データに基づく中立性を保つことを編集方針としています。詳しくは 編集ポリシー と 免責事項 をご覧ください。
1. 第三種冷凍機械責任者の全体像
第三種冷凍機械責任者を理解するうえで外せない3つのポイントを、最初にまとめておきます。
- 冷凍設備の高圧ガスの保安を担う国家資格:経済産業省が所管し、高圧ガス保安法に基づく資格です。第一種・第二種・第三種のうち、第三種が入門にあたります
- 受験資格なし(誰でも受験できる)。科目免除の制度がある:試験は2科目ですが、講習を活用すると「保安管理技術」が免除され、国家試験は「法令」だけになります
- ビルメンの入門資格群「4点セット」の1つ:設備管理の現場で必要とされる資格の一つで、ビルの空調・冷凍設備で活きます
2. 第三種冷凍機械責任者は冷凍・空調設備の保安を担う国家資格
ビルの空調機やスーパーの冷蔵ショーケースは、冷媒ガスを圧縮・膨張させて熱を移動させることで冷やしています。この冷媒は高圧のガスで、扱いを誤ると事故につながります。法律で保安の担い手として定められているのが、冷凍機械責任者です。
冷凍機械責任者は高圧ガス保安法に基づく国家資格で、所管は経済産業省、試験を実施するのは高圧ガス保安協会(KHK)です。免状は第一種・第二種・第三種の3区分に分かれ、扱える冷凍設備の規模(冷凍能力)が区分ごとに異なります。
| 区分 | 扱える冷凍設備の規模(1日の冷凍能力) |
|---|---|
| 第三種 | 100トン未満 |
| 第二種 | 300トン未満 |
| 第一種 | 制限なし(すべての規模) |
(出典:高圧ガス保安協会)
第三種は3区分のうち入門にあたり、1日の冷凍能力が100トン未満の設備を担当できます。中小規模のビルの空調・冷凍設備には、この範囲に収まるものが多くあります。
3. 第三種冷凍機械責任者の受験概要
3.1 受験資格
第三種冷凍機械責任者試験に受験資格はなく、誰でも受験できます。年齢・学歴・実務経験などの要件はありません。
3.2 試験科目と合格基準
試験科目は「法令」と「保安管理技術」の2科目で、いずれも五肢択一のマークシート方式です。
| 科目 | 問題数 | 試験時間 |
|---|---|---|
| 法令 | 20問 | 60分 |
| 保安管理技術 | 15問 | 90分 |
(出典:高圧ガス保安協会)
合格基準は、各科目とも満点の60%程度が目安です。保安管理技術には冷凍サイクルの計算問題が含まれ、暗記中心の科目とは性格が異なります。
なお、試験に合格すれば、免状の交付を申請できます。同じ4点セットの二級ボイラー技士は試験合格に加えてボイラー実技講習などが必要ですが、第三種冷凍機械責任者は試験合格で免状の交付を申請できます(現場で冷凍保安責任者に選任されるには別途実務経験が必要ですが、免状の取得自体は試験合格で完了します)。
3.3 受験料・試験日程
受験料は、電子申請が9,800円、書面申請が10,300円です(いずれも非課税)。試験は年1回、例年11月ごろに全国で実施されます。第三種・第二種は都道府県知事が実施する試験で、申込は例年8月から9月ごろです。
なお、受験料・試験日程・申込期間は変更される場合があります。最新の情報は高圧ガス保安協会の公式情報でご確認ください。
4. 高圧ガス製造保安責任者講習の受講と科目免除の仕組み
第三種冷凍機械責任者には、試験対策を分散できる科目免除の制度があります。これは、高圧ガス保安協会が実施する講習を活用するルートです。
仕組みは次のとおりです。
1. 高圧ガス保安協会の高圧ガス製造保安責任者講習(冷凍)第三種を受講する(21時間。法令7時間+保安管理技術14時間)
2. 講習の後に行われる検定試験を受ける(検定の科目は「保安管理技術」のみ)
3. 検定試験に合格する
4. その後の国家試験で「保安管理技術」が免除される
5. 国家試験は「法令」の1科目だけを受ければよくなる
ここで押さえておきたいのは、免除されるのは「保安管理技術」であって、「法令」ではない点です。計算問題を含む保安管理技術を講習でじっくり学んで検定で固め、国家試験当日は法令1科目に集中する、という組み立てになります。
講習の受講受検料は17,500円で、年2回ほど実施されています。計算問題に不安がある方や、国家試験当日の負担を分散したい方の選択肢の一つです。なお、講習の日程・料金は変更される場合があるため、最新の情報は高圧ガス保安協会の公式情報でご確認ください。
5. 冷凍保安責任者の選任と実務経験
第三種冷凍機械責任者の免状を取ることと、現場で冷凍保安責任者として選任されることは、別の段階です。
高圧ガス保安法に基づき、一定規模以上の冷凍設備を持つ事業所は、冷凍保安責任者を選任して都道府県知事に届け出る必要があります。この冷凍保安責任者に選任されるには、免状に加えて実務経験が求められます。第三種の場合は、1日の冷凍能力が3トン以上の製造施設で1年以上の経験が必要です。
つまり、試験に合格して免状を取得しても、それだけで保安責任者になれるわけではなく、現場での経験を積んで初めて選任の対象になります。
6. 第二種・第一種へのステップアップ
第三種の上には、第二種・第一種があります。
第二種冷凍機械責任者は1日の冷凍能力300トン未満、第一種冷凍機械責任者は規模の制限なくすべての冷凍設備を担当できます。どちらも第三種を取得していなくても受験できます。
ただし、第二種・第一種には第三種にない「学識」(冷凍工学の計算や理論を問う科目)が加わり、試験の負担は第三種より大きくなります。冷凍能力の制限がない第一種まで取得すれば、規模を問わず冷凍設備の保安を担えるようになります。
7. 冷凍空調技士との違い
冷凍に関する資格には、「冷凍機械責任者」と名前の似た「冷凍空調技士」があります。この2つは、制度の根拠も用途も異なる別の資格です。
| 資格 | 種別 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 冷凍機械責任者(第一種〜第三種) | 国家資格(高圧ガス保安法) | 高圧ガス設備の保安管理 |
| 冷凍空調技士 | 民間資格(日本冷凍空調学会) | 冷凍空調機器の設計・施工 |
(出典:日本冷凍空調学会)
第三種冷凍機械責任者は、高圧ガス保安法に基づく国家資格で、設備の保安管理を担い、選任義務にも関わります。一方、冷凍空調技士は日本冷凍空調学会が認定する民間資格で、機器の設計や施工に関する技術を認定するものです。名前が似ているため、混同しないよう注意が必要です。
8. 学習方法・難易度・教育訓練給付金
第三種冷凍機械責任者は、独学でも通信講座でも対策できる資格です。市販のテキストや過去問集がそろっており、過去問を中心に学ぶ方が多くいます。
8.1 学習時間の目安と合格率
学習時間の目安は、通信講座各社や受験経験者の情報によると80〜200時間ほどです。理系の基礎知識がある方は短め、知識ゼロから始める方は長めになる傾向があります。保安管理技術の計算問題があるため、法令の暗記が中心の乙4などと比べると、対策に少し手間がかかります。
合格率について、高圧ガス保安協会の公表によると、令和7年度の第三種冷凍機械責任者試験(全科目受験)の合格率は45.0%(受験者7,716人・合格者3,476人)でした。ただし、合格率は年度によって変動が大きく、過去には18%台から45%台の範囲で推移しています。最新の数値は高圧ガス保安協会の公式情報でご確認ください。
(出典:高圧ガス保安協会)
8.2 通信講座と教育訓練給付金
通信講座は、教材・添削・質問対応がセットになり、在宅で学習を進められる選択肢です。計算問題の解き方を体系的に学びたい方に向いています。
通信講座のなかには、厚生労働省の教育訓練給付制度の対象になっているものがあります。対象講座を受講して修了すれば、受講料の一定割合が支給されます。ただし、対象講座は時期によって変動し、対象者にも雇用保険の被保険者期間などの要件があります。対象講座や自分が対象かどうかの調べ方は、別記事でまとめています。
9. よくある質問(FAQ)
Q:理系の知識がない文系でも合格できますか?
A:合格している方には、理系の専門知識がない状態から始めた方も多くいます。保安管理技術に冷凍サイクルの計算問題が含まれますが、出題のパターンはある程度決まっており、過去問で解き方に慣れていく学習が一般的です。計算が不安な場合は、講習による科目免除を使う方法もあります。
Q:科目免除の講習を使うのと、2科目とも受験するのとでは、どちらがよいですか?
A:計算問題に不安がある方や、国家試験当日の負担を減らしたい方は、講習で保安管理技術を固めて免除を受けるルートが選択肢になります。一方、費用を抑えたい方や独学で2科目とも対策できる方は、そのまま2科目を受験する方もいます。講習には受講受検料がかかるため、費用と負担を見比べて選ぶとよいでしょう。
Q:第三種を受けずに、いきなり第二種や第一種から挑戦できますか?
A:できます。第二種・第一種にも受験資格はなく、第三種を取得していなくても受験できます。ただし上位区分は「学識」の科目が加わり、難易度が上がります。扱いたい設備の規模や目的にあわせて、どの区分から挑戦するかを選ぶことになります。
Q:取得した免状に有効期限はありますか?
A:冷凍機械責任者の免状そのものに、更新は設けられていません。一度取得すれば、更新手続きなしで持ち続けられます。ただし、現場で冷凍保安責任者として選任される際の実務経験の要件は、免状とは別に確認が必要です。
Q:どのような職場で必要とされますか?
A:ビルの空調設備の管理、スーパーや食品工場の冷蔵・冷凍設備、冷凍倉庫など、高圧ガスを使う冷凍設備のある現場で必要とされます。ビルメンテナンス業界では、設備管理の担当者が取得を目指す資格の一つになっています。
10. まとめ
本記事では、第三種冷凍機械責任者を、高圧ガス保安協会・経済産業省の一次情報をもとに解説してきました。
第三種冷凍機械責任者は、冷凍設備の高圧ガスの保安を担う国家資格で、受験資格なし(誰でも受験できる)です。試験は法令と保安管理技術の2科目ですが、講習を活用すれば保安管理技術が免除され、国家試験は法令だけになります。試験に合格すれば免状の交付を申請でき、二級ボイラー技士のように実技講習を別途受ける必要はありません。ただし、現場で冷凍保安責任者として選任されるには、別途実務経験が必要になります。
これで、ビルメン4点セットの4資格がそろいました。受験を考えている方にとって、本記事がその準備の材料になれば幸いです。
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出典
- 高圧ガス保安協会(KHK)「国家試験の概要」(所管・根拠法・試験科目・受験料・冷凍能力区分)
- 高圧ガス保安協会(KHK)「高圧ガス製造保安責任者講習(冷凍)」(科目免除・講習時間・受講受検料)
- 高圧ガス保安協会(KHK)「試験科目の一部免除制度」(保安管理技術の免除)
- 冷凍保安規則(e-Gov 法令検索)(冷凍保安責任者の選任・実務経験要件)
- 公益社団法人 日本冷凍空調学会「資格案内」(冷凍空調技士との違い)
文責:現場エンジン編集部
