「電気のある暮らしや産業を支える国家資格」── それが電気工事士です。「電気工事士とは何か」「第二種と第一種はどう違うのか」「どちらを目指せばよいのか」と、検討の入口で疑問を持つ方は少なくありません。本記事では、電気工事士の制度を電気工事士法・電気技術者試験センターなどの一次情報をもとに中立的に整理します。
現場エンジン編集部は、資格スクール・業界団体から独立した立場で、公式情報を正確に整理することを重視しています。年収や合格しやすさを煽るのではなく、まず制度の事実を押さえ、第二種と第一種のどちらが自分に合うかを判断する材料を提供します。
なお本記事は、データに基づく中立性を保つことを編集方針としています。詳しくは 編集ポリシー と 免責事項 をご覧ください。
1. 結論先出し ── 電気工事士の3つの要点
最初に、電気工事士という資格の要点を3つに整理します。
- 電気工事士は国家資格:電気工事士法に基づき、電気工事の作業には原則としてこの資格が必要です(電気工事士法で定める一部の軽微な作業を除く)
- 第二種と第一種の2区分:第二種は一般用電気工作物(低圧・600V以下)、第一種はそれに加えて自家用電気工作物(最大電力500kW未満)まで従事できます
- 受験資格に制限なし:年齢・学歴・実務経験を問わず、誰でも受験できます
それぞれの詳細を、以降のセクションで一次情報をもとに掘り下げます。
2. 第二種と第一種の違い ── できること・工事範囲
電気工事士を検討するうえで最も重要なのが、第二種と第一種の違いです。両者は「従事できる電気工作物の範囲」で区分されています。
2.1 第二種電気工事士でできること
第二種電気工事士は、一般用電気工作物等(一般用電気工作物および小規模事業用電気工作物)の電気工事に従事できます。一般用電気工作物とは、電気技術者試験センターによれば「低圧(電圧600V以下)で受電している施設等」のことです(取得日 2026-05-22)。なお小規模事業用電気工作物は、低圧で受電する一定規模未満の太陽光・風力発電設備などを指します。
具体的には、次のような現場が代表的です。
- 一般住宅・マンションの屋内配線
- 商店・小規模事業所の電気設備
- 小規模な太陽光発電設備 など
身近な住宅・店舗の電気工事を担えるのが第二種です。未経験から最初に目指すケースも多い資格といえます。
2.2 第一種電気工事士でできること
第一種電気工事士は、第二種の範囲に加えて、自家用電気工作物のうち最大電力500kW未満の需要設備の電気工事にも従事できます。自家用電気工作物は「高圧以上の電圧で受電している事業場等」と説明されています(電気技術者試験センター/取得日 2026-05-22)。対象は受電して電気を使う「需要設備」に限られ、発電設備や送配電線路はこの範囲には含まれません。
具体的には、次のような現場が加わります。
- 中小ビル・商業施設の電気設備
- 工場・倉庫の高圧受電設備(最大電力500kW未満)
- 大規模な店舗・施設 など
つまり、第一種は第二種より扱える現場の幅が広い資格です。
2.3 比較表 ── 範囲・受験資格・免状要件
第二種と第一種の主な違いを整理します。
| 項目 | 第二種電気工事士 | 第一種電気工事士 |
|---|---|---|
| 工事範囲 | 一般用電気工作物等(低圧・600V以下) | 左記+自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備) |
| 受験資格 | 制限なし | 制限なし |
| 免状交付の要件 | 試験合格で交付(実務経験不要) | 試験合格+実務経験3年以上 ※ |
| 免状の更新 | 更新不要 | 5年ごとに定期講習の受講義務 |
※第一種は、試験合格+電気工事の実務経験3年以上で免状が交付されます。このほか、電気主任技術者免状の取得+実務経験5年以上という別ルートもあります。免状交付要件・定期講習の詳細は、最新の制度を経済産業省・各都道府県でご確認ください。
(出典:電気工事士法/電気技術者試験センター「資格と電気工事の種類」/取得日 2026-05-22。根拠法令は電気工事士法)
データを読み解く
第二種は試験に合格すれば免状が交付されますが、第一種は試験合格だけでは免状が交付されず、所定の実務経験が必要です。このため、未経験から始める方の多くは、まず第二種を取得し、実務経験を積みながら第一種を目指す流れになります。第二種=入門、第一種=ステップアップ、と整理すると分かりやすいでしょう。
なお、電気工事業として独立・開業する場合は、電気工事業の登録や主任電気工事士の選任など、試験・免状とは別の要件が必要です。働き方の詳細は、電気工事士の仕事内容・働き方をまとめた記事(公開予定)で扱います。
3. 試験制度と最新の合格データ
電気工事士試験の仕組みと、最新の結果データを見ていきます。
3.1 試験の構成 ── 学科と技能の2段階
電気工事士試験は、学科試験と技能試験(実技)の2段階で構成されます。学科試験は近年 CBT 方式(コンピューターを使った試験)でも受験できるようになっています。試験は第二種・第一種とも年2回(上期・下期)実施されます(電気技術者試験センター/取得日 2026-05-22)。
学科試験に合格すると技能試験に進み、技能試験に合格すると資格取得となります。ただし第一種は、試験に合格しても免状交付には別途の実務経験が必要です(§2.3参照)。
3.2 令和7年度の試験結果
電気技術者試験センターが公表している令和7年度(2025年度)の試験結果は以下のとおりです(取得日 2026-05-22)。
| 区分 | 学科 受験者 | 技能 受験者 | 技能 合格率 |
|---|---|---|---|
| 第二種 上期 | 70,945人 | 51,576人 | 72.0% |
| 第二種 下期 | 68,142人 | 48,034人 | 71.4% |
| 第一種 上期 | 13,524人 | 11,876人 | 55.1% |
| 第一種 下期 | 22,630人 | 16,527人 | 60.3% |
(出典:電気技術者試験センター「第二種電気工事士試験 結果」「第一種電気工事士試験 結果」/取得日 2026-05-22)
データを読み解く
技能試験の合格率は、第二種が7割前後、第一種が5〜6割で推移しています。第二種のほうが合格率は高い傾向にありますが、これは難易度だけでなく、受験者層(実務未経験の入門者が多い第二種、実務者が多い第一種)の違いも背景にあります。
合否は本人の学習量・経験・受験対策によって大きく異なります。難易度・学習時間・独学の可否といった具体的な学習情報は、電気工事士の難易度・合格率・受験資格などで整理しています。
4. 将来性をデータで見る
電気工事士の将来性について、需要の動向を出典付きで整理します。
4.1 需要を押し上げる3つの要因
電気設備の新規施工・保守の需要は、近年いくつかの構造的な要因で広がっています。
- 再生可能エネルギー:太陽光発電や蓄電池設備の普及が進み、その設置・接続・保守を担う電気工事の需要が増えています。住宅用から事業用まで、規模に応じて第二種・第一種それぞれの出番があります。
- 電気自動車(EV):EV充電設備の設置が、住宅・商業施設・事業所で広がっています。低圧で受電する普通充電設備は第二種、高圧受電を伴う急速充電設備は第一種の範囲に関わるなど、電気工事士の活躍の場が増える分野です。
- データセンター:デジタル化やAIの普及に伴い、大規模な電力設備を備えたデータセンターの増設が続いています。高圧・特別高圧の電気設備に関わる人材の需要が高まっています。
これらは、電気人材の需要を支える要因として継続的に取り上げられています(経済産業省のエネルギー関連資料・業界団体の公開資料より/取得日 2026-05-22)。
4.2 人手不足・高齢化
電気工事業を含む現場系の技能職では、就業者の高齢化と若手の入職減少が課題として指摘されています。経済産業省の電気保安人材に関する検討資料でも、電気工事士を含む保安人材の需給について継続的に議論されています(経済産業省 電力安全小委員会 関連資料/取得日 2026-05-22)。
データを読み解く
人手不足や高齢化は、業界にとっては課題である一方、これから参入する人にとっては機会ともいえます。引退を迎える世代の技能を引き継ぐ若手や、未経験から挑戦する人を受け入れる素地が広がっているためです。加えて、再エネ・EV・データセンターといった需要要因は、電気工事士が活躍する場面を増やす方向に働いています。資格を取得して経験を積めば、住宅から最先端の産業設備まで、活躍できるフィールドは幅広いといえるでしょう。
ただし、「将来性が高い=必ず稼げる・安泰」とは言い切れません。実際の仕事量・収入・働き方は、地域・経験・雇用形態・景気動向などにより異なります。本記事では将来性を需要動向の事実として整理し、賃金や安定性の断定はしません。
5. 関連資格と電験との違い
電気工事士と混同されやすい資格に「電験(電気主任技術者)」があります。役割の違いを押さえておきましょう。
| 資格 | 役割 |
|---|---|
| 電気工事士 | 電気設備の工事を行う(手を動かす) |
| 電気主任技術者(電験) | 事業用電気工作物の保安・監督を行う(管理する) |
電気工事士が「電気工事を施工する資格」であるのに対し、電験は「電気設備の保安を監督する資格」で、役割が異なります。両資格は、キャリアのステップアップや専門性の拡張を検討する文脈でよく並べて語られます。
このほか、認定電気工事従事者(自家用電気工作物のうち低圧部分の簡易な電気工事に従事)や、特種電気工事資格者といった関連資格もあります。特種電気工事資格者は、ネオン工事・非常用予備発電装置工事という、第一種電気工事士であっても単独では従事できない特殊な工事を行うための資格です。
電験三種の詳細は、電験三種のまとめ記事(公開予定)で扱います。
6. よくある質問(FAQ)
Q:試験に合格した後、免状交付にはどんな手続きが必要ですか?
A:試験合格後、住所地の都道府県知事に免状交付を申請します。第二種は試験合格で交付されますが、第一種は試験合格に加えて所定の実務経験が必要です。手続きの詳細・必要書類・手数料は、お住まいの都道府県の担当窓口でご確認ください。
Q:外国籍の方や高校生でも受験できますか?
A:電気工事士試験は受験資格に年齢・学歴・国籍の制限がなく、誰でも受験できます。実際に高校生や学生の受験者もいます。ただし免状交付や就労に関しては別途の要件・手続きがある場合があるため、最新情報を公式でご確認ください。
Q:第二種を取ってから第一種まで、どれくらいかかりますか?
A:第一種は試験に合格しても、免状交付には所定の実務経験(3年以上等)が必要です。そのため、第二種取得後に実務経験を積みながら第一種試験に挑戦し、要件を満たした段階で免状交付を受ける、という流れが一般的です。期間は本人の実務状況により異なります。
Q:独学で取れますか?
A:合否は本人の学習量・経験・受験対策により大きく異なります。参考書中心の独学で合格する方も、通信講座を活用する方もいます。どの学習方法が向くかは、技能試験の練習環境を確保できるか、独学を無理なく続けられるかなどで変わります。
7. まとめ ── 電気工事士の全体像
本記事では、電気工事士の制度を一次情報をもとに整理してきました。
- 国家資格:電気工事士法に基づき、電気工事の作業に原則必要
- 2区分:第二種(一般用電気工作物・600V以下)/第一種(+自家用電気工作物・最大電力500kW未満の需要設備)。第一種の免状交付には実務経験が必要
- 受験資格は制限なし:誰でも受験でき、令和7年度の技能試験合格率は第二種7割前後・第一種5〜6割
電気工事士は、住宅から産業設備まで電気を扱う現場で必要とされる資格です。再エネ・EV・データセンターなどの需要要因はありますが、収入や将来の安定は本人の経験・地域・働き方により異なります。本サイトは、公式情報を中立に整理し、判断材料を提示することを立場としています。
次に読むべき記事
電気工事士の学習・費用・評判については、以下の記事でそれぞれ深掘りします。
出典
- 電気技術者試験センター「電気工事士試験について」(取得日 2026-05-22)
- 電気技術者試験センター「資格と電気工事の種類」(取得日 2026-05-22)
- 電気技術者試験センター「第二種電気工事士試験 結果」(取得日 2026-05-22)
- 電気技術者試験センター「第一種電気工事士試験 結果」(取得日 2026-05-22)
- 電気工事士法(e-Gov 法令検索)(取得日 2026-05-22)
- 経済産業省 産業構造審議会 電力安全小委員会(電気保安人材関連資料)(取得日 2026-05-22)
文責:現場エンジン編集部
最終更新日:2026-05-22
