工場の生産ライン、ボイラー、空調や照明。ものづくりの現場では、これらの設備が大量のエネルギーを使っています。このエネルギー使用を管理し、無駄をなくしていく専門家として法律で位置づけられているのが、エネルギー管理士です。
本記事では、エネルギー管理士について、経済産業省と実施機関である一般財団法人省エネルギーセンター(ECCJ)の一次情報をもとに解説します。受験資格や試験の内容に加えて、免状交付に必要な実務経験や、試験と並ぶ「エネルギー管理研修」という取得ルートにもふれます。
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1. エネルギー管理士の全体像
エネルギー管理士を理解するうえで外せない3つのポイントを、最初にまとめておきます。
- 工場・事業場のエネルギー使用を統括する国家資格:経済産業省が所管し、省エネ法に基づく資格です。実施機関は一般財団法人省エネルギーセンター(ECCJ)です
- 資格取得には実務経験1年以上が必要:試験に合格しただけでは免状は交付されません。実務経験は合格の前後を問いません
- エネルギー管理研修を修了しても取得可能:研修の受講には実務経験が3年以上必要ですが、講義後の修了試験に合格することでも資格を取得できます
2. エネルギー管理士は工場・事業場のエネルギー使用を統括する国家資格
工場や事業場が使うエネルギーは、大きく分けて熱と電気の2種類に分かれます。エネルギー管理士は、このどちらかを専門分野とし、エネルギー使用の合理化を担う国家資格です。
根拠法はエネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(通称:省エネ法)です。所管は経済産業省で、試験・研修の実施は一般財団法人省エネルギーセンター(ECCJ)が行っています。
試験で選択するのは、熱分野と電気分野のどちらかです。ボイラーや炉のような熱を扱う設備を主に担当するか、電力設備を主に担当するかで、選ぶ分野が変わります。
3. エネルギー管理士の受験資格と試験の概要
3.1 受験資格
エネルギー管理士試験は、受験資格は問われず、誰でも受験できます。年齢・学歴・実務経験などの要件はありません。
3.2 試験科目と出題形式
試験は、選択した分野(熱または電気)ごとに4課目で構成されます。両分野に共通する「必須基礎区分」と、分野ごとに内容が異なる「専門区分」に分かれます。
| 区分 | 熱分野 | 電気分野 |
|---|---|---|
| 必須基礎区分(共通) | 課目I:エネルギー総合管理及び法規 | 課目I:エネルギー総合管理及び法規 |
| 専門区分 | 課目II:熱と流体の流れの基礎 | 課目II:電気の基礎 |
| 専門区分 | 課目III:燃料と燃焼 | 課目III:電気設備及び機器 |
| 専門区分 | 課目IV:熱利用設備及びその管理 | 課目IV:電力応用 |
(出典:一般財団法人省エネルギーセンター)
試験はマークシート方式の筆記試験で、年1回・例年8月の日曜日に、全国10地区で実施されます。
3.3 合格基準
合格基準は、選択した分野の4課目すべてで、各課目の配点の60%以上を得ることです。1課目でも60%を下回ると不合格になる、課目ごとの足切り方式です。
一部の課目のみ合格した場合は「課目合格」として扱われ、その試験が行われた年の初めから3年以内に同じ分野を受験するときは、合格済みの課目が免除されます。
(出典:一般財団法人省エネルギーセンター)
3.4 受験料・試験日程
受験料は17,000円(非課税)です。試験は年1回、例年8月に実施されます。
なお、受験料・試験日程は変更される場合があります。最新の情報は一般財団法人省エネルギーセンターの公式情報でご確認ください。
4. 免状の交付には実務経験1年が必要
試験に合格しても、それだけでは免状は交付されません。免状の交付を申請するには、エネルギーの使用の合理化に関する実務に1年以上従事したことを証明する書類の提出が必要です。
この実務経験は、試験合格の前後を問いません。合格前からすでに実務経験がある人はそのまま申請でき、合格後に実務経験を積む人は、その後に申請します。
こうした実務要件は、他のビルメンテナンスに関する資格と比べても位置づけが異なる点です。この違いは後ほど整理します。
5. エネルギー管理研修を修了しても資格取得可能
エネルギー管理士の資格を得る方法は、試験に合格することだけではありません。経済産業大臣の登録を受けた省エネルギーセンターが実施するエネルギー管理研修を修了するルートもあります。
ただし、この研修は受講することそのものに実務経験3年以上が必要です。試験ルートの「免状交付に実務1年」よりも長い実務経験が、研修では入口の時点で求められます。
研修の内容は、講義(オンライン動画視聴)と、そのあとに行われる修了試験の2段階です。講義を受けただけでは資格は取得できず、修了試験(マークシート方式)に合格する必要があります。修了試験にも課目合格の仕組みがあり、一部課目のみ合格した場合は翌年度に限り免除されます。
受講料は70,000円(非課税・新規受講の場合)です。研修修了後は、資源エネルギー庁に認定申請書を提出することで免状が交付されます。
つまりエネルギー管理研修は、「試験を受けずに済む代わりに講義さえ受ければよい」というルートではなく、実務経験・講義・修了試験という3つの要件をすべて満たして初めて資格が得られる、独自の取得ルートです。
6. 選任義務と、エネルギー管理員との違い
6.1 選任義務の対象
省エネ法では、一定規模以上のエネルギーを使う工場・事業場を「エネルギー管理指定工場等」として指定し、管理者の選任を義務づけています。指定の基準は、熱と電気を合算した原油換算のエネルギー使用量で決まります。
| 区分 | エネルギー使用量の基準 |
|---|---|
| 第一種エネルギー管理指定工場等 | 年間3,000kL以上 |
| 第二種エネルギー管理指定工場等 | 年間1,500kL以上3,000kL未満 |
(出典:資源エネルギー庁)
このうち、第一種の中でも製造業など特定の5業種(鉱業・製造業・電気供給業・ガス供給業・熱供給業)に該当する工場・事業場は、エネルギー管理士の免状を持つ「エネルギー管理者」を、エネルギー使用量の規模に応じて1〜4人選任しなければなりません。
それ以外(5業種の事務所部門、5業種以外の第一種、すべての第二種)は、後述する「エネルギー管理員」を選任します。
選任義務に違反した場合は罰則が定められています(詳細は最新の法令・公的情報でご確認ください)。
6.2 エネルギー管理員との違い
名称が似ているため紛らわしいのが「エネルギー管理員」です。エネルギー管理員には、エネルギー管理士免状の保有者のほか、省エネルギーセンターが実施する「エネルギー管理講習」を修了した人からも選任できます。
つまり、エネルギー管理者は免状保有者に限られる一方、エネルギー管理員は免状がなくても講習修了で務まる、という違いがあります。
7. ビルメンテナンスに関する資格の中でのエネルギー管理士の位置づけ
ビルメンテナンスに関する資格には、「3種の神器」と呼ばれる電験三種・ビル管理士・エネルギー管理士があります(業界で使われる呼称で、公式に定められた分類ではありません)。
これまで見てきたとおり、実務経験が問われる段階は資格によって異なります。
| 資格 | 受験資格 | 実務経験が必要になる段階 |
|---|---|---|
| 4点セット(電気工事士・二級ボイラー技士・第三種冷凍機械責任者・危険物乙4) | なし | なし、または免状交付の段階(二級ボイラー技士のみ実技講習等) |
| 電験三種 | なし | なし(試験・免状とも不要) |
| エネルギー管理士 | なし | 免状交付の段階(実務経験1年以上) |
| ビル管理士 | 実務経験2年以上が必要 | 受験の段階 |
(出典:各実施機関公式情報を整理)
エネルギー管理士は、受験のハードルこそ低いものの、免状という出口に実務経験の関門がある資格です。ビルメンテナンスに関する資格の全体像は、ビルメンの資格とは|4点セット・3種の神器と未経験からのキャリアアップ でまとめています。
8. 学習方法・難易度・教育訓練給付金
8.1 合格率
エネルギー管理士試験は、選択した分野の4課目すべてで基準を満たす必要があり、苦手な課目を作らない学習が求められます。
一般財団法人省エネルギーセンターの発表によると、令和7年度(第47回)試験の新規受験者数は8,300名、合格者数は2,783名でした。省エネルギーセンターは合格率(%)そのものは公表しておらず、編集部でこの人数から算出すると約33.5%になります。
(出典:一般財団法人省エネルギーセンター)
8.2 通信講座と教育訓練給付金
エネルギー管理士の対策には、独学のほか、通信講座を活用する方法もあります。通信講座の中には、厚生労働省の教育訓練給付制度の対象になっているものも存在します。対象講座を受講して修了すれば受講料の一定割合が支給されますが、対象講座は時期によって変動し、対象者にも雇用保険の被保険者期間などの要件がある点に注意が必要です。対象講座や自分が対象かどうかの調べ方は、別記事でまとめています。
9. よくある質問(FAQ)
Q:試験を受けるのと、エネルギー管理研修を受けるのと、どちらを検討すべきですか?
A:エネルギー管理研修は受講そのものに実務経験3年以上が必要で、すでにそれだけの実務経験がある方向けの選択肢です。ただし研修も、講義を受けただけで資格が取れるわけではなく、修了試験に合格する必要があります。実務経験がまだ3年に満たない方や、試験対策を自分のペースで進めたい方は、試験ルートを選ぶことになります。
Q:免状交付に必要な「実務経験1年」は、具体的にどんな仕事が対象になりますか?
A:エネルギーの使用の合理化に関する実務が対象です。工場や事業場でのエネルギー管理業務がこれにあたりますが、自分の実務経験が対象になるかどうかの判断に迷う場合は、実施機関への確認が必要になることがあります。
Q:エネルギー管理員とは何が違いますか?
A:エネルギー管理者は、エネルギー管理士免状の保有者から選任されます。一方エネルギー管理員は、免状保有者に加えて、省エネルギーセンターが実施する講習の修了者からも選任できます。
Q:選任義務はどんな工場・事業場に発生しますか?
A:熱と電気を合算した年間のエネルギー使用量が原油換算で1,500kL以上の工場・事業場が対象です。3,000kL以上は第一種、1,500kL以上3,000kL未満は第二種に区分され、第一種のうち製造業など特定の業種ではエネルギー管理士免状を持つエネルギー管理者の選任が義務づけられています。
10. まとめ
本記事では、エネルギー管理士を、経済産業省・一般財団法人省エネルギーセンターの一次情報をもとに解説してきました。
エネルギー管理士は、工場・事業場のエネルギー使用を統括する国家資格です。受験資格は問われず誰でも受験できますが、免状の交付には実務経験1年以上が必要です。試験に合格する以外に、エネルギー管理研修を修了するルートもありますが、こちらも実務経験3年以上と修了試験の合格が必要で、受講するだけで自動的に資格が取れるわけではありません。
これで、3種の神器と呼ばれる電験三種・ビル管理士・エネルギー管理士がそろいました。
これから受験を検討している方にとって、本記事がその判断の材料になれば幸いです。
次に読むべき記事
- ビルメンの資格とは|4点セット・3種の神器と未経験からのキャリアアップ
- 第三種電気主任技術者(電験三種)とは|事業用電気工作物の保安監督・科目別合格制・ビルメン中核の国家資格
- 建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)とは|受験資格の実務経験・登録講習会・選任義務
出典
- 一般財団法人省エネルギーセンター「試験制度概要」(受験資格・合格基準・課目合格制度)
- 一般財団法人省エネルギーセンター「試験の内容」(試験科目・受験料・試験日程)
- 一般財団法人省エネルギーセンター「合格者発表」(合格率)
- 一般財団法人省エネルギーセンター「エネルギー管理研修 制度概要」(実施機関・免状交付の実務要件・研修の位置づけ)
- 一般財団法人省エネルギーセンター「エネルギー管理研修 研修の内容」(受講資格・研修内容・受講料・修了試験)
- 資源エネルギー庁「事業者の区分と義務」(エネルギー管理指定工場等の指定基準・選任義務)
- エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(e-Gov法令検索)(根拠法)
文責:現場エンジン編集部
